2025年11月1日
理論と実務をつなぐ二つの証明
社会人としてキャリアを積み重ねるなかで、「資格を取るべきか」「学位を取るべきか」という問いに直面する人は少なくありません。どちらも“学びの成果”を示すものですが、その意味や価値、そして社会的な使われ方は大きく異なります。
しかし実際には、この二つの境界線をはっきり理解している人は意外と多くありません。本稿では、学位と資格の違いを整理しながら、両者がどのようにキャリアを支えるのかを考えてみます。
学位とは──学問体系への理解と探究の証
学位(Degree)は、大学や大学院などの教育機関が授与する「学問的成果の証」です。
たとえば、経営学士は Bachelor of Business Administration (BBA)、経営学修士は Master of Business Administration (MBA)、博士号は Doctor of Philosophy (Ph.D.) と表記されます。
これらは、一定期間体系的に学び、所定の単位を修得し、論文や研究成果を提出することで得られるものです。つまり、学位は「考え抜いた証明」であり、論理的思考力や研究能力の到達点でもあります。
学位の英語表記には、「of ○○」という形式が多く使われます。これは「○○という学問分野における~」という意味で、Bachelor of Science(理学士)や Master of Arts(文学修士)なども同様です。
一方で日本語では「○○大学卒業」と書かれることが多いですが、ビジネスの世界ではあまり名刺に記載されません。例外はMBAやPh.D.のように、専門職・国際的認知度の高い学位であり、これらは「Taro Suzuki, MBA」「Yuki Tanaka, Ph.D.」のように、肩書きとしても通用する場合があります。
資格とは──実務能力と信頼の証
資格(Certification / Qualification)は、特定分野の専門能力や実務スキルを、第三者機関が認定する「職能の証」です。
代表的なものとして、CMA (Certified Management Accountant)、CPA (Certified Public Accountant)、CFA (Chartered Financial Analyst) などがあります。
これらは学位のように大学が授与するものではなく、試験・経験要件・倫理基準などを通じて取得します。つまり資格は「できることの証明」であり、実務家としての信頼や信用に直結します。
資格は学位よりも名刺や署名に書きやすいという特徴があります。
英語圏では「John Smith, CMA」「Lisa Brown, CPA」のように名前の後に略称を付ける形式が一般的で、実務の世界で専門家としてのコミットする方向性やアイデンティティを示す役割を果たします。
学位が「どの分野を学んだか」を示すのに対し、資格は「何ができるか」「どのように貢献できるか」を示すという違いがあります。
マイクロ資格・検定・認定証プログラム──「学びの証」ではあるが「資格」ではない
近年は、オンライン講座や専門学校を通じて「○○ Certificate」や「認定講座修了証(Certificate of Completion)」といったマイクロ資格も増えています。これらは特定分野を短期間で学ぶプログラムとして非常に有用であり、スキルアップやキャリア探索の第一歩として高い価値があります。しかし、厳密には国家資格や国際的なプロフェッショナル資格(CMAやCPAなど)のように第三者機関による認定・倫理規範・更新制度を伴うものではありません。
そのため、名刺や署名に記載するケースはまれで、一般的には「履歴書」や「自己紹介文」などの中で「○○認定講座修了」「△△ Certificate(修了証)」として触れる程度です。つまり、これらは“資格”というよりも「学びの成果を記録するもの」に近く、実務上の信頼性や専門職としての地位を示す目的とは少し性格が異なります。
ただし、内容や発行機関によっては、MBA前後のスキル補完や専門領域の入口として非常に効果的なケースもあります。たとえば「Harvard Business School Online: Sustainable Business Strategy Certificate」などは、学位でも資格でもないが、学習意欲と国際的な視野を示すツールとして評価されることがあります。
なお、「Diploma」は学位(Degree)より短期間の専門教育課程を指すことが多く、日本語では「修了証書」や「専門課程修了資格」として扱われます。名刺にはあまり書かれませんが、専門学校や大学の職業教育課程では一定の位置づけを持っています。

英語表記と社会的な使われ方
以下は、代表的な学位・資格の英語表記と使われ方の比較です。
| 区分 | 英語表記例 | 意味・背景 | 名刺への書き方 |
|---|---|---|---|
| 学士号(学位) | Bachelor of Commerce (B.Com) | 大学卒業レベルの学問的理解 | 通常は書かない |
| 修士号(学位) | Master of Business Administration (MBA) | 実務家志向の学位 | 書く場合あり(例:Taro Suzuki, MBA) |
| 博士号(学位) | Doctor of Philosophy (Ph.D.) | 研究者・教育者・専門職向け | Ph.D.は肩書きとしても国際的に通用 |
| 資格 | Certified Management Accountant (CMA) など | 実務能力・専門分野での信頼性と信用力の証 | 名前の後に付記するのが一般的(例:Lisa Brown, CMA) |
| マイクロ資格・認定証 | ○○ Certificate / Certificate of Completion | 短期プログラムや検定の修了証・学びの成果の記録であり、学習意欲や最新スキルの獲得を示すツール | 名刺には基本書かない。履歴書やプロフィールで触れる程度 |
学位は、時間と理論の蓄積によって「考える力」を育み、資格は、実践を通じて「成果を出す力」を磨くもの。どちらが優れているというよりも、方向性と目的が異なると考えるのが自然です。
キャリア形成における二つの視点
現実のキャリアにおいては、学位と資格のどちらか一方だけでは不十分なこともあります。
MBAとCMA、あるいはPh.D.とCFAのように、学問的背景と実務的スキルを組み合わせることで、より高い専門性と応用力が生まれます。そして、場合によっては、マイクロ資格・認定プログラム等で最新スキルの獲得によってアップデートも必要です。
学位で「なぜそうなのか」を理解し、資格で「どう実行するか」を学ぶ。この二つを行き来することで、知識が経験に変わり、経験が知恵へと発展していきます。
BirdStarが考える「学びのかたち」
BirdStarでは、資格と学位のどちらにも共通する「学びの本質」を重視しています。
CMAやFMAAといった資格プログラムを通じて、単なる試験対策にとどまらず、学問的な思考を実務の現場でどう生かすかを探求します。
学位は理論の証、資格は実務の証。そしてその交差点にあるのが、BirdStarが目指す“教育と実践をつなぐ学び”です。
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